放送日: 2021-08-07 人・インタビュー

絶滅危惧種コアジサシが志布志湾で子育て成功!─地域と野鳥の会が紡ぐ5年間の保護活動

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番組名:LIFE大隅


鹿児島県で唯一の営巣地を守る人々の物語

コアジサシってどんな鳥?

青空に映える白い羽、鋭くシャープなシルエット──コアジサシは体長約24センチ(ハト程度)、翼を広げると50センチを超える小型の海鳥です。ツバメを思わせる尾羽を持ち、飛翔の美しさでも知られています。

飛翔するコアジサシ
飛翔するコアジサシ

「青空に白い羽がビーっとして、水の中にパパパッと入って魚を捕る。夏にピッタリの鳥ですよね」

観察会に参加した方がそう語るように、夏の海辺を象徴する存在でもあります。

しかし今、このコアジサシは深刻な危機に瀕しています。環境省はレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類(ごく近い将来に野生絶滅の危険性が極めて高い種)に指定。鹿児島県ではさらに厳しい絶滅危惧Ⅰ類(絶滅の危機に瀕している種)に指定されています。世界全体でも5,000〜10,000羽程度しか生息していないとも言われています。

オーストラリアから5,000キロを渡ってくる夏の旅人

コアジサシは「夏鳥」です。毎年春(4月末〜5月初旬)に約5,000キロもの距離をかけてオーストラリアから日本へ渡来し、子育てを終えた8月末に再び南へ帰っていきます。

そしてこの鳥には驚くべき習性があります──繁殖に成功した場所を翌年も「覚えて」戻ってくるのです。

日本野鳥の会鹿児島県支部副支部長の前田さんはこう話します。

「今年生まれた子も親たちも、成功したということが頭の中におそらく覚えてくれるでしょうから、来年はまた戻ってきて、だんだん増えてくれればいい」

志布志湾・田原川河口での保護活動

鹿児島県内でコアジサシが営巣しているとされる場所は、現在ここだけ──大崎町の田原川河口(志布志湾)です。

日本野鳥の会鹿児島県支部は、この地で約5年間にわたって繁殖保護活動を続けています。その取り組みは地道で、しかし熱心なものです。

守るための具体的な工夫

  • ロープによる立入制限:営巣地周辺の広い海岸エリアにロープを張り、車の進入を防ぐ
  • 竹製シェルターの設置:生えている竹を半分に割り、トンネル状にしたものを営巣地周辺に散らばせる。孵ったヒナたちが身を隠す「巣」として機能している

「竹をトンネルのようにしたものをあちらこちらに散らばらせると、それがうまく鳥たちの巣みたいな形になって、ヒナたちがその中に入っていた」

こうした工夫が、ヒナの生存率を高めているのです。

コアジサシの営巣
コアジサシの営巣周辺に竹製シェルターを設置

今年の観察会──感動の瞬間

2022年7月24日(日)早朝、強風が吹く中、9人の参加者が田原川河口に集まりました。

観察会の様子
この日集まった日本野鳥の会鹿児島県支部のメンバ-

今年は4月25日に志布志湾へ飛来が確認されましたが、最初の営巣は一週間後に獣に荒らされてしまいました。その後も幾度か繰り返しながら、ようやく約1カ月遅れで繁殖に成功。この日は孵化から約20日が経過していました。

観察地点は営巣地から約100メートル離れた場所。望遠鏡を使って観察すると、親鳥が戻ってくるたびにヒナたちがパタパタと寄ってくる様子が確認できました。この日時点で、すでに親と一緒に飛べるまでに成長した幼鳥が3羽いることも確認されています。

前田副支部長は感慨深げにこう語りました。

「今までこれだけヒナが育って、親と一緒に飛ぶようになったのは初めてのこと。非常に嬉しいです」

参加者からも「とっても可愛い鳥だと思いました」「ちゃんと育っているヒナがいて良かった」という声が相次ぎました。

 

浜辺のコアジサシ
浜辺のコアジサシ

地域と県境を越えた連携が鍵

前田さんが強調するのは、保護活動を成功させているのは「野鳥の会だけではない」ということです。

「地域の人たちと一緒に活動できているのが一番いい。コアジサシは鹿児島だろうが宮崎だろうが関係なく来る。志布志湾は宮崎県にもまたがる海岸で、お互いに情報交換しながら守っていきたい」

地元住民にも「コアジサシが来るんだよ」という認識が広まりつつあり、保護意識が着実に根づいてきています。こうした地域ぐるみの取り組みこそが、鹿児島県で唯一の営巣地を支えているのです。

おわりに──来年もまた会えることを願って

今年巣立った3羽の幼鳥たちは、夏が終わればオーストラリアへ5,000キロの旅に出ます。そして来春、彼らはここ志布志湾・田原川河口を「成功の地」として覚えており、再びやって来るかもしれません。

コアジサシの営巣地(志布志湾に注ぐ田原川河口)
コアジサシの営巣地(志布志湾に注ぐ田原川河口)

5年間の保護活動が実を結び始めた今、この小さな命たちをつなぐ取り組みは、確かに未来に向かって動き出しています。

取材協力:日本野鳥の会鹿児島県支部